Monday, February 17, 2020

『仏様の指』~ジャンピングボード~


 丹波小学校で毎朝見られる光景です。

 ジャンピングボードの真ん中あたりでジャンプすると,楽に高くあがることができます。そのため,この板を使うことによって二重跳び系の技が楽にできるようになります。

 教師が,跳び方を一生懸命指導しなくても,このジャンピングボードがあれば,子どもたちは『自分の力で』跳べるようになるのです。

 私は,優れた企業の社長,指導者,教師,親というのは,全てを教えて育てるのではなく,理想的なことは諺にもあります『一を聞いて,十を知る』指導ができることだと考えています。

 国語教育学者に私が尊敬する「大村はま」という教師がいます。彼女の著書の中に『仏様の指』という話があります。



「仏様が,ちょっと指で車に触れられました」
 私が若い頃,奥田正造先生から聞いたお話です。

ある時,仏様が道ばたに立っていらっしやると,一人の男が荷物をいっぱい積んだ荷車を引いて通りかかった。ぬかるみがあって,車はそれにはまってしまい,男が懸命に引っ張っても抜け出せない。男は汗びっしょりになって苦しんでいる。仏様はしばらく男の様子を見ていらしたが,やがてちょっと指でその単に触れられた。すると車はすっとぬかるみから出て,男はからからと車を引いて去っていった」というお話です。
 奥田先生は「こういうのが本当の教師なんだ。男は仏様の力にあずかったことを永遠に知らない。自分が努力して,抜け出したのだという自信と喜びを持って,車を引いていったのだ」とおっしやいました。
 このお話は,日が経つにつれ,私にとって深い感動となりました。もし仏様のおかげだと男が知ったら,ひざまずいて感謝したでしょう。それも喜びだとは思いますが,男が一人で生き抜いていく力にはならなかったでしょう。一人で生きていく自信,真の強さにはつながらなかったのではないかと思うのです。私が子どもを教え,そのおかげで力がついたとわかれば,子どもは感謝するでしょう。でも,「おかげ」と思っているうちは,本当にその子の力になっているのではないのです。
 生徒が,自分の力でがんばってできたという自信から,生きる力をつけるように仕向けていくことが,教師の仕事なのだと思います。       大村はま

 ジャンピングボードも,『仏様の指』だと考えています